【雑談】桃太郎6

「うっ! ぐっ!」
豪胆を持って知られた運刻齋も人の親、目の前で長男の腕を切り落とされて取り乱した。
「どうだ、芋虫になるまで待つか?」
青ざめた運刻齋は、目の前で痛みに転げ回る息子を見てがっくりと肩を落とした。
「わかった……待て……」
運刻齋はヨロヨロと壁際の掛け軸に寄った。
「隠し扉だ、その向こうにある階段を下りろ、お前の欲しいものが有る。勝手に持って行け」
「そうか、お前が先に降りろ」
「なにっ! そ、それは……」
「罠だよなぁ、必ず何かあるはずだ」
暫く下を向いていた運刻齋は、身を屈めて足元のワイアを外した。
「なるほどな」
桃太郎は天井を見て頷いた。
「薄暗い階段を下りていくとこのワイアに脚が引っかかって上から丸太が落ちてくるって細工か。
この重量だと普通の奴は死ぬだろうな」
言うや否や一刀両断に切り下げる。運刻齋は血しぶきを上げながら、ぐるっと身を翻して暗闇の急な階段を頭から転げ落ちて行った。
「灯りを持て」
桃太郎一人で松明を持って階段を下りると、十畳ほどの部屋に金銀財宝が詰まった箱が山積みになっている。
桃太郎は箱を一つ一つ開けて中身を改め、深い息を突いた。
「やっとここまでたどり着いたか、全く大変な苦労だった」
 
薄暗がりの中で桃太郎が財宝を改めている間、座敷ではどの女を残すかで、雉とそれ以外の者の間で意見の対立が生まれていた。
「先ほどは三十七、八と言うことだったが……もっと幅広に考えても良いのでは無いかな、例えば五十の女なぞもなかなか乙なものだぞ」
犬と猿は天井を眺めたり地面を見たり、「ん? これは」などと行ってその場を離れようとした。
「五十は極端かの。しかし四十五ならば」
その様子を見た雉は心の底から残念そうな声を上げるが、二人の表情は冴えない。
「……やはり三十七、八、この辺りが妥当か……」
「そうであろう、そうだと思うぞ」
「うむ、その辺りがちょうど尻が熟して味が良い」
犬と猿は一斉に、そうだそうだそれが良いと繰り返した。
 
そうこうしている間に腕を切り落とされた少年は出血多量で落命し、地下から戻った桃太郎の命で女の選別が始まった。
「マイナンバーカードで年齢はきちんと判断するんだ。多少上振れしても良いが、未成年は絶対ダメだ」
『規制』を恐れる桃太郎はくどいほどに繰り返した。
 
容姿も鑑みて選別すると残ったのは二十人に満たない。
「やはり2:8の法則か、こんなものだろうと思った。さぁ、財宝を引き揚げろ、船に乗せるんだ。選ばれた女も一緒に乗れ」
「桃太郎」
思い詰めた表情の雉が前に出た。
「随分考えたのだが……儂はここに残ろうと思う」
「なに?」
「ここに残される女は『規制』に引っかからないのは四十代以上……儂のドストライクなのだ」
「……そうか、しかし……分かった、それでは最後に再び団子を振る舞おう」
桃太郎は懐からラップに包まれた白い粉を三人に配った。
「思う存分炙ってくれ」
三人から歓声が上がった。
 
その後里に帰った桃太郎は、話しを大盛りに盛って、島には千人以上の鬼がおり、近隣の漁師に悪さをしていたので退治したと言う話を中心に、「人生とは」「男の生き方」「初夜の心得一から十」などの演目で講演活動をするようになった。
 
精力絶倫な犬は次々に女を妊娠させ、その話を聞いた曲亭某という男が、高貴な姫が犬に尻を犯されて妊娠するという変態小説を書いてAmazonでランキング一位に輝いた。
 
そして猿も犬同様何人もの女を妊娠させ、これに案を得た西村寿行先生は人妻と猿が性交する話を書いて、これも一部界隈で話題になった。
 
桃太郎の伝説は各地に口伝で伝わり形を変えたが、これが真実の話しである。(完)

【雑談】桃太郎3

オーディションが終わった後の会場には、切り落とされた首や腕、腹からはみ出た内臓、死にきれずに呻き声を上げている者が多数転がっていた。

返り血を浴びて立っているのは猿、犬、雉だけだ。
「生き残ったのは異形の者……キメラだけか」
「キメラ?」
父親が聞き慣れない言葉に聞き返す。
「俺も意味など知らん。急に頭に浮かんだんだ。これも河田という男の仕業だろう」

「おい、桃太郎、お前の言うことを聞いていれば金と女が手に入る、間違い無いな」
人を斬って興奮が収まらない犬が肩で息をしながら荒々しい様子で問いただす。
「間違い無い。最もお前らがしくじらなければの話だがな」
「仕事の内容はいつ聞けるんだ」
無表情の雉が静かに尋ねた。
「明日、俺の家に来い。そこでオペレーションBreaking Downの説明をする。その前に今日の褒美に団子をやろう」
桃太郎は懐からラップに来るんだ白い粉を渡した。
「あぶっても良いし、ポンプでも好きにやれ。ただし純度が高いから普段の粗悪品みたいにいきなり大量にはやるなよ」
全員が嬉しそうな顔をして手を伸ばした。
「こういう余録は大歓迎だ。混ぜ物無しってのは久しぶりだな」
猿が全員を見渡しながら声を弾ませた。
「良い働きをした奴には褒美としてこれからもこれを配るぞ。しっかり頼む」

翌朝、桃太郎の家に三人が集まった。
昨日の殺人のせいなのか薬物のせいなのか、全員未だに興奮が残っている。

「鬼ヶ島をやる」

全員の前に立った桃太郎は決然と言った。
思わず三人がざわつき、顔を見合わせた。
「確かにあそこには財宝が沢山あるし、女も尻がデカい良い女だらけだと聞いている……しかし防御も堅いという噂だぞ」
「正確には船着き場の防御だけが堅い、ここには武装した侍が控えている。こいつらの練度は高い」
桃太郎は動画を再生した。
「数年前、中に潜入した奴が撮影したものだ」
普段船着き場を警護している侍の稽古の様子が大型ディスプレイに映された。
剣だけでは無く長巻や槍も十分使いこなしている。
画面の下に『特別な訓練を受けています』というテロップが流れる。
「武器だけでは無いぞ」
手にオープンフィンガーグローブを付けて、グラップリングや打撃の練習も
行われており、レベルが高い。
「俺たちだけでやるのか?」
雉が静かに尋ねた。
「もっと人数を揃えた方が良いんじゃねぇのか? たった四人じゃ……」
犬の言葉に、
「臆したか」
桃太郎がからかうように言った。
「なにっ!」
気色を変えると猿と雉が止めに入る。
「勝算があるんだろうな?」
猿の言葉に桃太郎は大きく頷いた。
「全員の協力が必要だ、ここで仲間割れしている場合じゃ無い」
桃太郎はパワーポイントで作った資料を基に作戦の全容を説明し始めた。