【雑談】桃太郎5

頼りの熊が斃されてしまうと警備の兵士達は浮き足立ってしまい、次々に斬り殺されていった。
「村長! 出てこい! お前が隠れていると島の者は全員斬り殺すぞ!」
燃えさかる家を背に、村長宅の庭に入り込んだ桃太郎の大音声が響いた。
ほとんどの男が惨殺され、焼けた家から逃げ出せた女達が、雉や猿に脅されて庭の隅に固まり震えている。
時折家が焼け落ちる大きな音と悲鳴が聞こえる。
暫くしてゴトゴトと重たげな音を立てて雨戸が開かれ、中から寝間着姿の中年男が出て来た。
「この村の長、運刻齋だ。一体何の騒ぎだ!」
血まみれの桃太郎達を見ても一向に臆する様子が無い。腹の据わった男のようだ。
後ろに女房らしき中年女、若い娘に少年が不安げな表情で立っている。
「見て分かろうが、村の半分は焼け落ちた。男達は警護の者も含めほとんど斬り殺してやったわ。そこにいる女が生き残りだ」
「何の恨みがあっての所業だ」
「恨み? そんなものはない。この島に隠されている財宝を全て差し出せ。二十歳から三十四歳の女は全部貰って行く」
「戯けたことを申すなっ!」
運刻齋は大声で怒鳴り返した。
「桃太郎……こんな時になんだが……もう少し若い娘も」
猿がモジモジしながら言う。
「だめだ! 規制に引っかかる恐れがある」
「規制?」
「詳しくは知らん! 俺の頭の中に直接話しかけてくる河田という男が、ヘンシューシャと言う者に以前きつく言われて恐れておる」
「と、年上なら良かろう、三十七、八の熟した女が欲しい」
犬が鼻息荒く良い、雉も後ろで頻りに頷いている。
「うむ……それくらいは良かろう」
「何をゴチャゴチャと勝手なことを! 財宝は先祖伝来守り抜いてきたもの、今更貴様らごときに渡すわけには行かぬ。
婦女子も同じ事、生き延びた者は全員守り抜く!」
運刻齋は平青眼に構え、ズズッと間合いを詰めた。
「単なる年寄りと思うなよ、警備の熊は儂が仕込んだのだ」
裂帛の気合いとともに、桃太郎の頭上めがけて火の出るような激しい一撃を打ち込んでくる。
桃太郎も負けじと気合いを込めて刀を受け止め、返す刀で面を狙う。
隙を見て後ろに回った犬が槍で運刻齋の腰を刺した。
「ず、ずおっ……ひ、卑怯な」
「勝てば良いのよ、我らの望みは財宝と女のみ。卑怯も糞も無い」
地面にがっくりと膝を突いた運刻齋は、歪んだ顔で桃太郎を睨んだ。
「わしが死んだら財宝の場所の分からぬぞ」
「だから急所を外したんだ、さぁ、どこにあるのか吐け」
犬が背中を蹴った。
「……」
「そうか、言わぬか。それではお前の息子を芋虫にしてやろう」
まっ青な顔で震えている息子を庭に引きずり出すと、無造作に刀を振るい片腕を切り落とした。
島中に絶叫が響いた。隅で震えていた女達、家族からも悲鳴が湧く。
「この調子で両腕両足を切り取ってやろう。お前が白状しないせいだ。自分を恨め」