【雑談】桃太郎4

「普通の雉は高く飛ぶのは苦手だが、お前はどれくらい舞い上がることが出来る?」
「鬼ヶ島の周囲の崖程度なら楽に飛べるぞ。何ならお前ら一人くらいなら背負ってでも飛べる」
 桃太郎は頷いた。
「普通の雉の数倍の体格だ、ある程度飛べるだろうと思ったがやはりそれくらい飛べるんだな。
まさにお前が今言ったことをやって欲しい」
「一人ずつ島のてっぺんに上げるのか?」
「そうだ、船着き場には武装した奴らがいるが、それ以外は全く無防備だ。
だから闇夜に隠れて一人ずつ島に上がり、村長の家を襲う。こいつが財宝の場所を知っているはずだ」
「抵抗したらどうする?」
 猿が身を乗り出す。
「まず家族を殺す。それでも喋らない時には体を一寸刻みにする。肘と膝を切ってダルマにしても良い」
「それは良い!」
 犬が踊り出しそうなほど喜んだ。
「いや、お前にはやって欲しいことがある。村長の家を襲っているうちに護衛の兵士が船着き場から上がってくるだろう。
こいつらの首領は熊だ。
お前ら同様人語を解し剣を使う。かなり強いという噂だ。この熊を仕留めて欲しい」
「熊か……良いだろう」
 
当日の深夜、四人は闇夜に隠れて鬼ヶ島の船着き場と逆方向に船を着けた。
「頼むぞ、雉。最初は俺だ」
桃太郎がしがみつくと、普通の雉の何倍もの大きさの羽を力強く羽ばたかせて垂直に崖を上がっていった。
鎧を着、刀や長巻を持っているのでかなりの重量の筈だが軽々と島の頂上へと桃太郎運び上げた。
「さすがだな! この調子で他の二人も頼む」
大人数を斬ることになるはずだ。刃の長い長巻を構え、闇に向かって数回振ってみる。
村はしんと静まり返り灯りがついている家は無い。
村人は約男女100人ずつ、家は約40戸だ。スピーディーに事を進める必要がある。
本当はクレイモア爆弾を使う予定であったのだが手に入らなかったので、村長の家から離れたところから火を付けるつもりだ。
そのための油も用意してある。
破壊の衝動に腹が熱くなり、武者震いがする。
 
「揃ったな? 雉ご苦労だった、体力は大丈夫か」
「おお、この程度なんでも無い。さあ、計画通り火を付けて参ろう」
 
四人は事前の計画通り闇の中に散った。Google Earthでおおよその家の位置は把握して地図に書き込んである。
暫くして何かがはぜる音がし、焦げ臭い匂いが漂ってきた。
「火事だ! 火事だぞ!」
最初に外に出て来て火の見櫓に走った男は、猿に首を跳ね飛ばされた。
その斬られっぷりがあまりに見事であったため首無しの胴体だけが暫く走り続け、その様子を見ながら地面に転がった顔は不思議そうな顔をしている。
「諸君、喝采したまえ、喜劇は終わった」
男は首だけで呟き目を閉じたが、暫くしてまた目を開けた。
「なかなか死ねぬものだな、今の台詞はイヤにスラスラ出たが考えれば誰かの剽窃のような気がするぞ……まぁここまで読む奴もいないか」
 
火の手はあっという間に広がった。
 
村長の家やその周辺の比較的大きな家は、家と家の間が広かったり小川が流れたりしているのでまだ焼け残っている。
 
慌てて逃げ出した村人を桃太郎と猿、雉が斬りまくっている。時折雉が空に舞い、隠れている者を探し出して、三人に教えている。
 
「その大木だ、裏に隠れている奴がいるぞ! どうやら若い娘もいるようだ、男だけを斬るんだ」
 
「おい! うぬら、どこから上がってきた! 一人残らずぶった切ってやる」
船着き場から予想通り武装した兵士が駆け上がってきた。先頭にいるのは逞しい体を鎧で覆った熊だ。
「お前の相手は俺だ!」
返り血で真っ赤になった犬が熊の前に出た。
「図体はデカいが動きが鈍そうだ。刀のサビにしてやる」
「ふんっ! 何も知らないんだな! 俺は時速60kmで走ることが出来る。お前などより遥かに速いぞ」
言い終わるやいなや、犬の激しい一撃が熊を襲った。
激烈な攻撃を受け流して逆胴からすねを払うかと思うと、目にも留まらぬ三段突きで熊に傷を負わせた。
「どうした? 強いのは口だけか?」
逆上した熊が襲いかかってくると首筋に刀を当て、太い頸動脈をぶつりと切断した。
途端、猛烈な血しぶきが上がり、熊はゆっくりと倒れていった。
「椿三十郎は意外にリアルだったんだな」
荒い息の中で犬は独りごちた。
刀を見れば大きな刃こぼれが幾つも出来ている。犬は刀を捨て、槍を手にした。