【雑談】桃太郎2 

桃太郎の指示により、里に沢山の看板が立てられた。

流派不問・経験不問、町の喧嘩自慢大歓迎、真剣勝負で最も強い者を求めている。勝ち残ったもので仕事をし、成功すれば金も女も自由になる、と書かれている。

具体的な内容は分からないが、危ない橋を渡ってそれなりの報償が得られるのだと言うことだけは分かる。

多数の応募者が見込まれるので、勝負は一分で行う事となった。

当日の会場には、普段町で暴れている不良や食い詰めた浪人、話を聞きつけた人語を解する熊、猿などの動物も集まった。

「桃太郎、我が息子ながら恐ろしいぞ、短期間の間にこれだけの準備をしてのけるとは。どこでそれだけの知恵を得た」

「わからぬ……ただ『河田慈音』という名前がやたらと浮かんでくる。この者の意向で動かされているような気がする……さてそろそろ始めようか」

桃太郎は立ち上がり、会場を見回した。

「最初にひとりずつ自己紹介と思いを語ってくれ、あんたから」

最前列に座っていた、目がぎょろぎょろとしたボサボサ頭の男を見ながら言った。

「あーっと、十人野郎って言われてます。武器を持った相手十人を素手でぶちのめしたことがあるので……四年くらい前ですけど」

会場が一斉にざわめいた。

「十人ってスゴいですね。今やれます? そこで」

「あ、良いっすよ」

まさかその場で勝負をさせられるとは思っていなかったのだろう。一瞬ひるんだ表情を見せたものの、すぐに虚勢を張ってみせた。

「じゃあ相手になる人」

「やります」

立ち上がったのは猿だった。

背丈も人間と変わらず、逞しい体に鎧を身に着けている。刀は身の厚い同田貫だ。

「猿、お前にやれんのかよ」

すかさず声がかかる。

猿は振り返り声を掛けた男を見た。

「なにそれ、俺に言ってんの?」

つかつかと傍によると何の躊躇も無く胸を蹴り飛ばす。

蹴られた男は溜まらず床にひっくり返った。

すぐに周囲に詰めていた係の者が二人を分けた。

「十人野郎の前にお前をやっちまうぞ、この野郎」

「本当に強い人っているのはそんな態度は取らないものだよ」

男は立ち上がりながら紅潮した顔で言った。興奮に声が震えている。

「ちょっと、そこ止めて。十人野郎との勝負だからさ」

桃太郎が声を掛ける。

暫く目をつり上げて男を睨み付けていた猿は十人野郎と対峙した。

双方刀を抜いて向き合うとその実力差は明白だった。

十人野郎は先ほどの威勢の良さはどこへやら、土気色の顔でガタガタと震えている。

猿が裂帛の気合いとともに間合いを詰めると、ヘナヘナとその場にしゃがみ込んだ。

しかし猿は容赦しない。砂の上に座り込んだ十人野郎の頭を唐竹割りに切って捨てた。

バスッと言う音がし、脳症が辺りに飛び散り、勢い良く血が吹き出た。

思わず他の者から声が出る。

「同田貫は斬れる……」

猿は満足げに独りごちた。